私の好きな人は とっても優しい人なんです
待ち合わせは午前10時
ほんの少しだけ早く辿り着いた 喫茶店の中で
香り高い紅茶を注文する
「長太郎くんと待ち合わせ?」
マスターのからかうような声も もうすっかりお馴染みのもの
いつもの窓側の席に腰掛けて 外を見ていると
慌ててやってくる 背の高い銀色の髪の男の子
あ…れ? 横断歩道を知らないお婆ちゃんと歩いている?
それから通りすがりの人の道案内をして
財布を落とした人を大慌てで追いかけて
迷った子供たちの為にタクシーを止めてあげた
「新菜さんっ 待たせてしまってごめんなさいっ」
「気にしないで 別にいいのよ」
手元には空っぽの白いティーカップ
「紅茶一杯分 素敵なものを見せてもらったから」
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