LOVERS

91      この一杯を飲み終わるまで   (鳳長太郎)
 
 
 
 
 
 私の好きな人は とっても優しい人なんです
 
 
 
 
 待ち合わせは午前10時
 ほんの少しだけ早く辿り着いた 喫茶店の中で
 香り高い紅茶を注文する
 「長太郎くんと待ち合わせ?」
 マスターのからかうような声も もうすっかりお馴染みのもの
 
 
 
 
 いつもの窓側の席に腰掛けて 外を見ていると
 慌ててやってくる 背の高い銀色の髪の男の子
 あ…れ? 横断歩道を知らないお婆ちゃんと歩いている?
 それから通りすがりの人の道案内をして
 財布を落とした人を大慌てで追いかけて
 迷った子供たちの為にタクシーを止めてあげた
 
 
 
 
 「新菜さんっ 待たせてしまってごめんなさいっ」
 「気にしないで 別にいいのよ」
 手元には空っぽの白いティーカップ
 「紅茶一杯分 素敵なものを見せてもらったから」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/10/01
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Last updated: 2010/5/14