LOVERS

90      揺れる   (海堂薫)
 
 
 
 
 
 「もう お前とは会わねぇ…」
 突然告げられた一言に 目の前が真っ暗になる
 そんな間にもどんどん遠ざかってゆく背中
 走っても走っても 追いつけないままに
 「待って! 待って! 待って!」
 気がついた時は 自分の涙声で目が覚めた
 
 
 
 
 久しぶりのデートなのに なんか上手に笑えなくって
 でも海堂くんって そういうこと絶対すぐにわかっちゃうの
 「何か あったのか?」
 「別にっ なんにも」
 「…嘘つけ」
 
 
 
 
 「夢?」
 うわっ 怒ってる そうだよね…そう思うよね
 勝手に夢を見て 一人で落ち込んで
 でもこれもみーんな 海堂くんのことなんだもの
 夢の中でも本当に本当に悲しかったの
 だから…
 「起きてから すぐにトイレに行ったか?」
 「へっ? いっ…行ったけれど…」
 「そうしたら悪い夢は流れて行くって話だ」
 「本当に?」
 「あと起きてすぐに誰かにそれを話すと良いらしい」
 「…そういえばお姉ちゃんに話したかも」
 「いいか そのこと絶対に忘れるんじゃねぇぞ」
 「はいっ」
 
 
 
 
 「…意外と迷信を信じるタイプだったんだな」
 「そこの人 意味のないデータは取らないの!」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/07/27
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Last updated: 2010/5/14