山吹中の誇りは　この白い制服

　でも実は南健太郎はそれがあまり好きではなかった

 

 

 

 

 

　「ゲッ　またやっちまった…」

　放課後にみんなと食べる肉屋のコロッケ

　それらのソースや油は白い色の天敵みたいな存在で

　いずれももれなく大きなシミへと姿を変えてしまう

　「ったく　めんどくせえよなあ」

　もちろん制服の手洗いは可能だったけれど

　これだけ続くと母親の顔も酸っぱくなってくる

　「…あの　よろしかったらこれを使いませんか？」

　背後から聞こえる可愛い女の子の声

　同じ白い制服の女の子が差し出したのは　小さなスプレーボトル

　「染み抜きなんです　私もよくやっちゃうから」

　「いいのか？」

　「残りも少ないから持っていっていいですよ」

　「悪いな　サンキュ」

　手を振って別れる２人を　テニス部の面々は唖然として見守っている

　そして決定打は…

　「可愛い子だったと思わね？」

　あの南が…南が…

　万有引力の法則に従って

　全員のコロッケが見事に地面へと落下した

 

 

 

 

　コロッケと染み抜きボトル　何度思い出しても地味な出会いだ

　でも『双方の一目惚れ』という最高のハッピーエンドが彼を待っていることを

　南はまだ知らない