冬の午後は日が暮れるのが早い
ちよっとした報告をしたり 授業のノートを手渡しただけで すぐに暗くなってくる
「…もう 帰らなくちゃ」
彼の言い出しにくいことは なるべく先に言うようにしている
「もうこんな時間なんだ」
「また明日来るね」
「うん…」
あと数日の入院と その後の投薬
状況によっては手術の必要があるのだと聞いた
正体不明の病魔 彼はたった一人でそれと戦っている
「ねえ 新菜」
「なに?」
「この体が動かなくなったとき それでも君は俺を抱いてくれるか」
それは初めて口にした 甘えにも似た言葉
「…もちろんよ」
この体も 心も 未来も
私の中にある全ては 永遠にあなただけのもの
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