LOVERS

72      グレイゾーン   (白石蔵ノ助)
 
 
 
 
 
 関西を制した学校の部長
 その名前は自分が想像していたよりもずっと重いもので
 もちろんそれから逃げるつもりはないが
 でもこんなことはみんなにはとてもじゃないけれど言えなくて
 丸ごと捨ててしまえたら楽なのにって思う
 まるでジャケットを脱ぎ捨てるようにして
 
 
 
 
 「どうしたの? 蔵…なんか静かだね」
 前からじっと覗き込んでくるのは 女子部の部長
 長い茶色の髪と大きな目の女の子だ
 「なあ 新菜…」
 「ん?」
 「俺がもし テニスを辞めたいって言ったら どうする?」
 賢そうな目を伏せて 彼女の口はこう語る
 「私が追い抜くだけの話だよ?」
 
 
 
 
 …そうきたか
 
 
 
 
 そこまで言われちゃやるしかないやん
 激動の中 わけがわからなくなったとしても
 全速力で走っていこうって気持ちになる
 
 
 
 
 友情とか愛情とか そんなものより遙か向こうにある感覚
 俺達はそんな強い絆で結ばれている
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/09/16
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Last updated: 2010/5/14