関西を制した学校の部長
その名前は自分が想像していたよりもずっと重いもので
もちろんそれから逃げるつもりはないが
でもこんなことはみんなにはとてもじゃないけれど言えなくて
丸ごと捨ててしまえたら楽なのにって思う
まるでジャケットを脱ぎ捨てるようにして
「どうしたの? 蔵…なんか静かだね」
前からじっと覗き込んでくるのは 女子部の部長
長い茶色の髪と大きな目の女の子だ
「なあ 新菜…」
「ん?」
「俺がもし テニスを辞めたいって言ったら どうする?」
賢そうな目を伏せて 彼女の口はこう語る
「私が追い抜くだけの話だよ?」
…そうきたか
そこまで言われちゃやるしかないやん
激動の中 わけがわからなくなったとしても
全速力で走っていこうって気持ちになる
友情とか愛情とか そんなものより遙か向こうにある感覚
俺達はそんな強い絆で結ばれている
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