「ねえハル…雪だよ! 雪降ってる!」
濃紺の空から舞い降りてくるのは 今年初めての雪
いつもの年よりも少し早いような気もしたが
これで早朝から冷え込んでいた理由がわかる
「どーりで寒いわけだよな」
「なにじじむさいこと言ってんだか」
同じ年の幼なじみの彼女は からかうように笑いながら舌を出した
春風という名前のわりに この男は寒さにはからっきし弱い
それなのに防寒の仕度を面倒くさがるのだ
「何やってんだか! 手袋貸してあげるよ」
「いいよ別に…お前が寒くなんだろ」
「やせ我慢している人に言われたくなーいっ」
「俺の手はでっかいからすぐ伸びちまうぞ」
「いいよ これ百円ショップのやつだしね」
打てば響くような 相変わらずな2人
とりあえず お互いの片手に手袋をつけて
もう一方の手は自宅まで繋いで行こう
少し恥ずかしいし 誰にも見られたくはないけれど
今は この雪が全てを隠してくれると信じて…ねっ
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