LOVERS

71      指先だけ触れ合って   (黒羽春風)
 
 
 
 
 
 「ねえハル…雪だよ! 雪降ってる!」
 濃紺の空から舞い降りてくるのは 今年初めての雪
 いつもの年よりも少し早いような気もしたが
 これで早朝から冷え込んでいた理由がわかる
 「どーりで寒いわけだよな」
 「なにじじむさいこと言ってんだか」
 同じ年の幼なじみの彼女は からかうように笑いながら舌を出した
 
 
 
 
 春風という名前のわりに この男は寒さにはからっきし弱い
 それなのに防寒の仕度を面倒くさがるのだ
 「何やってんだか! 手袋貸してあげるよ」
 「いいよ別に…お前が寒くなんだろ」
 「やせ我慢している人に言われたくなーいっ」
 「俺の手はでっかいからすぐ伸びちまうぞ」
 「いいよ これ百円ショップのやつだしね」
 打てば響くような 相変わらずな2人
 
 
 
 
 とりあえず お互いの片手に手袋をつけて
 もう一方の手は自宅まで繋いで行こう
 少し恥ずかしいし 誰にも見られたくはないけれど
 今は この雪が全てを隠してくれると信じて…ねっ
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/04/15
前のページ 目次 次のページ

戻る


Last updated: 2010/5/14