LOVERS

69      月明かりだけでかまわないから   (柳蓮二)
 
 
 
 
 
 レースのカーテン越しに見つめた月は
 いつもより大きく 降り注ぐ光も洪水のように思えた
 
 
 
 
 前にも一度こういうことがあった
 彼女の体を包む唯一のブランケットをそっと外して
 青白い光にさらされる様子をただ眺めていた
 まるで磁器で作られたもののように輝く とても滑らかな体
 何か特別な存在に捧げられたかのような…
 それまで自分が何をしてきたかも全て棚に上げて
 ひたすらにその美しさに酔い続けていた
 
 
 
 
 「へん…なの」
 「そうか?」
 「だって蓮二くんの方がずっと綺麗なのに…」
 俺の頬に伸びる指先
 そして大きな月の姿を写し取る瞳
 
 
 
 
 「私 見られていたんだ」
 「そうだな」
 「もっと見せびらかしてもいい?」
 いじらしく言った直後の唇が 妖しく微笑んだ
 
 
 
 
 「来て?」
 
 
 
 
 
更新日時:
2004/12/27
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Last updated: 2010/5/14