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触れるだけのキス (幸村精市)
夕焼けのオレンジ色の光が射す病室で
穏やかな表情のまま眠り続ける人
一切の汚れを知らない 真綿の雪のような
そんな美しさを前に ただ黙って立ちつくしていた
もしそれに例えるものがあるとしたら
白い雪の名前を持つお姫様
ガラスの棺に横たわりながらも
それでも王子の心を捕らえて離さなかった
私も王子の心のままに 一歩ずつ前に進んで行く
目覚めてほしいのではなくて
ただ…そうせずにいられないだけ
「…新菜?」
「おはよう 精ちゃん」
更新日時:
2004/12/11
Last updated: 2010/5/14