LOVERS

54      待ち合わせは5分前に到着を   (海堂薫)
 
 
 
 
 
 世の中には なにかと絡まれ易い人間がいるものなのだと
 俺はあいつと付き合うようになって知った
 だから待ち合わせの時間よりも少し早く着くようにしようと心に決める
 そうでもしなけりゃ あいつを守ることは出来ないから
 
 
 
 
 …なのに…
 
 
 
 
 「あのっ 私待ち合わせをしていて…」
 「いいじゃん 少しで良いからさあ」
 それがナンパなのか勧誘なのかはわからない
 でも小柄で頼りない感じの女の子は格好のターゲットだったのだろう
 だから何度も『時間に遅れてこい』と言ったのに!
 「…おい」
 「ンだよ うるせーな…って ぎゃあああーーーっっ」
 「誰に断ってそいつに話かけてんだ ああ!?」
 「すっ すみませーんっっ」
 
 
 
 
 「あのね ごめんね海堂くん…」
 走り去ってゆく連中を見送った後のポツンと一言
 「お前 俺の話を聞いてねーだろ」
 「違うの! そうじゃないの…」
 真っ赤になって そのまま俯いてしまって
 「だって海堂くんに早く会いたくて仕方なかったんだもの」
 それは硬派な少年の心を砕いてしまうのに充分な一言だった
 
 
 
 
 「それでわざわざ自宅まで迎えにくることにしたのか」
 「それ以前になんで先輩がここにいるんスか!?」
 「だってここ 俺の彼女の家でもあるし」
 「……」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/05/30
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Last updated: 2010/5/14