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5      胸の奥に隠した真実   (平古場凛)
 
 
 
 
 
 世の中 ただ『好き』なだけでは駄目なのかもしれない
 彼のいないテニスコートを見て そんなことを思った
 
 
 
 
 「おサボリですか? 平古場くん」
 「なんだ お前か…」
 目の前に海が広がる丘の上
 そこに寝ころぶ彼の隣に腰を降ろした
 これまで何度もこういう時間を過ごしてきたけれども
 (大丈夫なの?)
 (本当は嫌なんじゃないの?)
 (もしそうなら テニスをやめたって…)
 相手の為の筈の言葉を ぐっと奥に飲み込みながら
 
 
 
 
 武術とはある意味対極の位置に存在するテニスというスポーツ
 そこに飛びこぶのは 喜びよりも不安の方がずっと大きい筈で
 チームメイトの事…試合の事…そして先生の事
 「ンな心配そうな面すんな」
 「でも…」
 「確かにサボりはしたが 別にやめたりはしねーよ」
 スッとしなやかな指の先を大空に向けて
 「目指すものは 確かにそこに存在してると思うからな」
 
 
 
 
 「平古場凛!!」
 「なんだよ 急に」
 「…頑張れ」
 
 
 
 
 いつでも どこにいたとしても
 この声があなたの耳に響きますように
 
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/04/13
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Last updated: 2010/5/14