「なんでこんなに面倒なのよ! この家はーっ!!」
シンプル・イズ・ベストのこの世の中で
一体何処の誰がこんなベルサイユみたいな家を立てるっていうのよ
ベッキンガム宮殿なんて通称 シャレにもなんない
大体ここに両指何本分の人間が住んでいるワケ?
それに加えてひたすらにだだっ広い庭
今まで遭難者が出ていないのが不思議なくらい
ここが伯母様の嫁ぎ先でなかったら 一生縁がなさそうな家だ
憤慨しながら歩いていたら 細かい細工付きの石畳に足を捕らえられて…
「キャアアアーーーーッッッ!!」
今日もまた無防備に転んでしまう
そう思ってきつく目を閉じたときに 私を支えてくれた大きな腕の主は…?
「大…丈夫…?」
心配そうに私を見ている 小さいけれど綺麗な目
スッと抱きかかえてくれる仕草は 生まれながらの騎士のよう
それでも決して多くは語らない日本男児の背中
ーなんて素敵な人…
「景ちゃん! あの氷帝の制服着た人って誰?」
「アーン? 樺地のことか?」
「樺地くんっていうんだ。ねえねえどんな女の子が好きなのかな?」
「俺様がそんなこと知るか」
「チッ…使えない奴」
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