「ねえ　知っている？」

　仔猫のように気まぐれなくせに　外すことの出来ない視線

　「本当のダビデ像って　瞳の部分がハートなの！」

　「それ　なんの話？」

　「この前トリビアでやっていた」

　…あっ　それ見るの忘れてた

　毎週楽しみにしていたんだけれどな

 

 

 

 

　「…で　新菜ちゃんはなんでジッと俺を見ているの？」

　「こっちのダビデはどうなのかなと思いまして」

　「それで　どうだった？」

　「…普通みたい」

　そっか　それは残念だったね

　でもそれで良かったんだと思うよ　

　俺のハートはたった一人に与えられた特権のようなもの

　そんなにあちこち飛ばすのは　正直よろしくはない

 

 

 

 

　「いつか本物を見に行こうか　一緒に」

　「そんなこと言って　ダビが見たいのは向かいにある裸婦像でしょっ」

　「…えっ？　裸婦像？　そんなの向側にあるのっ？　楽しみだっ　絶対いこっ」