「ねえ南くん　明日あいているかな…」

　「おう」

　「じゃあね　どこか一緒に行かない？」

　「いいぜ」

 

 

 

 

　たった数秒で終わってしまう私たちの会話

　テニス部がその日休みなのかどうか心配で　声をかけるのにも勇気がいたのに

　その返事はじれったいほど簡単すぎて

　南くんにとって　私なんてそのくらいの存在なのかな

　…こんなに　大好きなのに

 

 

 

 

　「大変です！　デートです！　南部長がデートするです！」

　「たっ太一　そんなでかい声で言ったらあの男が沸いて出て…」

　「へぇー　南くんデートすんの　こりゃすみにおけないねえ」

　「うるせーぞ　万年発情期男が」

　「でも初めてなんだろ？　大丈夫なのか？　なんならついていってやっても…」

　「東方　気持ちだけもらっとくから」

　「そんでどこに行くか決まったのか？」

　「いや　それがまだ…」

　「やっぱりビギナーは映画っしょ　おーい　誰かぴあ持ってこいよ」

　「若いとは良いですねえ　私も妻と知り合ったばかりの頃はよく…」

　「はいはい　老人の回顧録はまた今度ねー」

　「失礼な！！」

 

 

 

 

　私立山吹中学男子テニス部　全国レベルの強豪である…筈