LOVERS

29      好きになるって簡単?   (海堂薫)
 
 
 
 
 
 一つしか年は違わないけれど お兄さんのようなその人は
 その大きな手で何度も私の頭を撫でてくれた
 「大丈夫だよ」
 「あの男は絶対に嘘はつかないからね」
 「きっと君のことを守ってくれるよ」
 
 
 
 
 連れて行かれたのは 待ち合わせ場所の駅前
 そこで初めて『あの人』を見つけたの
 鋭い眼光は それでもびっくりするほど透明で
 簡単に人を寄せ付けないのは
 自分の場所をしっかりと持っているということ
 気がついた時には 一緒に来た人の手を引っ張っていた
 「…素敵な人ですね」
 「それを本人の前で言ってやるといい」
 まるで悪戯を企むような そんな口元
 「きっと面白いものが見られると思うよ」
 
 
 
 
 「それで私が海堂くんを素敵だって言った時にね…」
 「もういい…」
 「どうしたの? 顔真っ赤だよ!」
 「だからもう勘弁してくれ」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/01/09
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Last updated: 2010/5/14