LOVERS

28      こっちを向いて   (天根ヒカル)
 
 
 
 
 
 俺の彼女は隣のクラスにいる
 片想いだった頃は 時々顔を見かけるだけで本当にドキドキで
 本当にそれだけで幸せだった
 でもいざ両思いになってみたら
 それがとても寂しいことなんだって思い知った
 
 
 
 
 「オーッス」
 「バネさん お疲れー」
 「あれ? ダビデは?」
 「いつもンとこーッ」
 「…ああ 日生のところね」
 
 
 
 
 俺の彼女は美術部にいる
 ニッコリ笑顔も可愛くて大好きなんだけれど
 真面目でひたむきな表情を見るのは
 やっぱり放課後に美術部に来るのが一番良いわけで
 ー俺 半分ストーカーみたいになっています
 
 
 
 
 こっそりと窓から覗いてみたら
 いた! キャンバスを必死になって見つめている彼女
 一体何を描いているのかなあ…
 まあ目の前にある石膏の像なんだとは思うけれど
 そのひたむきさを俺は誰よりわかっているつもりだから
 だから…だから…それでも…ちらっとこっちを向いてくれないかな?
 でも今日もそんなことはありませんでした
 
 
 
 
 「おはよーダビ 昨日窓から部室覗いていたでしょ」
 「へっ? なんで知ってるの?」
 「だーってあんなに熱い視線 すぐにわかっちやうもの」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/06/12
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Last updated: 2010/5/14