REBORN!

8      10年後   (六道骸×クローム髑髏)
 
 
 
 
 
 「所帯をね、持とうかと思っているんですよ」
 「…は?」
 
 
 
 
 復讐者の水牢から約十年ぶりに解放されたこの男
 長く拘束されたことで 身動きの自由がきかなくなり
 ボンゴレ医務班の元 入院生活とリハビリを余儀なくされても
 相変わらず口の方は達者だったらしい
 つーか 開口一番でいきなり何言ってんだ?
 
 
 
 
 「なに狐につままれたような顔をしているんです」
 「そりゃ急にそんなこと言われればさ…相手はクローム?」
 「他に誰がいるんです」
 「あ やっぱり」
 
 
 
 
 そりゃわかっていたさ 遅かれ早かれこの日がやってくることくらい
 少なくともあの子がこの男以外の人間になびく姿も想像できなかったし
 ただ…急にこうして振られるとなあ…
 
 
 
 
 「住む家は…そうですね イタリアの美しい町並みが臨める場所がいい。反対側に青い海が見えたなら最高ですが そのあたりも考慮にいれてもらいましようか。しばらくは二人で暮らすのですから それほど広くなくてもいいですよ。クロームが掃除に苦労するようなら可哀相ですし。白を基調としたらオレンジ色の町並みにも青い海にも栄えるでしょうね。家具はシンプルで扱いやすいものを用意して下さい。反対にキッチンは高性能の最新式のものを。彼女の身長に合わせた日本製がいいでしょう」
 「ちょっと待て! それをすぐに用意しろって言うのか?」
 「この僕が たかがマフィア風情のために守護者として一時期体を預けてやろうと言っているのですよ。そこまでやるのは当然というものです」
 
 
 
 
 自分も山ほど仕事を抱えている筈なのに ごめんね獄寺くん
 でもこんなやっかいな注文 黙って引き受けてくれるのって君しか思いつかないや
 
 
 
 
 「お前 十年間近くそんなことばっか考えていたわけ?」
 「まあ他にすることもありませんでしたしねぇ」
 すでに二人の間に生まれる子供の名前も考えているんだろうなと思いつつ
 更に長くなりそうだったので そのことに関してつっこむのはやめておくことにした
 
 
 
 
 「滑稽な話だと思っているでしょうね」
 「骸…」
 「ただ これから巡り続ける時間の内 僅か数十年程度なら 誰かのために生きてもいいんじゃないかと思ったんですよ」
 
 
 
 
 もっともらしいことを言っているけど 本当は違うんだろう?
 二人が命と精神と肉体を共有していた十年間
 それは彼女が一人の人間として大きく成長し
 愛らしかった少女が 一人の女性として美しくなった時間であり
 それを最も近くで見つめていたのは 他ならぬお前だったじゃないか
 
 
 
 
 「いいんじゃない? 俺は祝福するよ」
 「ボンゴレ…」
 「ただ 他の守護者はどうかな。全員クロームのことを妹みたいに可愛がっていたから」
 「何を今更 僕が彼らに負ける理由がない」
 「入院生活の延長と同時に結婚式の延期が決まっても 彼らを恨まないでくれよ」
 
 
 
 
 そろそろ彼女がここを訪れる時間だ ならばこちらから先に退散することにしよう
 奴が十年間温めてきたプロポーズの言葉を聞いてみたい気もするけれどね
 
 
 
 
 「ちょっとお待ちなさい、沢田綱吉! まだ話は終わっては…」
 「スープの冷めない距離に柿本と城島の家…だろ?」
 
 
 
 
END
 
 
 
 
イメージソング   『君がいたから』   FIELD OF VIEW
更新日時:
2008/12/26
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Last updated: 2010/7/31