REBORN!

20      通りすがりの…   (ボンゴレ10代目×凪)
 
 
 
 
 
どんよりとした鉛色の暗い空
まるで天国の一部がゆっくりと降りてきたかのよう
でもこういう時ってなかなか髪がまとまらなくて苦手…
あの人のようになるためにしている あの人と同じ髪型
でも何度やり直しても今日は無理みたい
このまま出かけるしかないのかなあ
せっかくあの二人が買い物に誘ってくれたのに
 
 
 
 
リング争奪戦の舞台にもなった隣町の並盛
今は静かでのんびりした空気が流れている
まるであの夜の出来事が全て夢だったみたい
他のリングの持ち主たちは 傷も癒えて元気にしているのかな…
そんなことを考えているうちに 早歩きの二人を完全に見失ってしまった
耳元でサラサラとなびく髪が落ち着かない
あの曲がり角を過ぎれば追いつける筈だけれど
 
 
 
 
ードスッ!!
 
 
 
 
曲がり角を曲がってすぐに 何かに体当たりしたような激しい衝撃を受けた
その場で飛ばされるかのように 思いっきり尻餅をついてしまう
「きゃっ!?」
「すまない、急いでいたので…大丈夫かい?」
上から降り注いでくるのは 慌てたような男の人の声 さしのべられた手
「はいっ、大丈夫…です…」
 
 
 
 
黒いスーツ姿の 背の高い男の人
茶色の髪の後ろを少しだけ伸ばしている
少し怖い雰囲気があるのに どうしてだろう とても優しい人のように思える
なのに私を見る表情はひどく驚いたような感じがして
こちらもそれ以上動くことが出来ない
「あの、なにか?」
「…いや」
 
 
 
 
その人の張りつめたような感じの視線がフッと緩んで
優しい微笑みを浮かべながら 私の頭をそっと撫でた上に
髪を一すくい手にとって 自分の唇に触れさせる
「気を付けて 宵闇の髪のお嬢さん」
「あっ…」
耳元にそっと口を近づけると 甘い声でこう囁いた
「Arrivederci」
恥ずかしさに思わず目を伏せて 次に開いた瞬間には
その広い背中はどこにもいなかった
 
 
 
 
「ったく! なにとろくせーことやってるびょん」
「うん、そこで人にぶつかってしまって」
「…ドジ」
「うん…ごめんね」
 
 
 
 
それにしても 今の人誰だったんだろう
茶色の髪に 琥珀色の綺麗な瞳
どこかで会ったことがあるような気がするのに
ものすごく近くにいる人のようで…でも思い出せない
そして耳元にささやいたあの言葉は?
 
 
 
 
「あのね、千種…犬」
「なに?」
「多分イタリアの言葉だと思うの。えっと…ある? あるで? あれっ?」
「…なにそれ」
「わかってねーんなら、しゃべんなバカ」
「…ごめん」
 
 
 
 
Arrivederci…また会いましょう
出来るならば 平和な十年後の世界で
今よりも美しく成長した頃の君に
 
 
 
 
「10代目! ご無事でしたか」
「獄寺…」
「今話をしていた少女はクローム髑髏ですね。まだ彼女はミルフィオーレの監視下には置かれていないようですが」
「ああ。でもいつ未来に飛ばされてもおかしくない状況だ」
「どうします?」
「今は信じるしかないだろうな。あの二人と…彼女の中にいるもう一人の霧の守護者を」
「10代目…」
「俺たちは俺たちに出来ることをする。まずはこの時代のボンゴレ本部と接触しよう。ミルフィオーレの現状と、入江正一との接点を徹底的に調べ尽くす」
「承知しました」
 
 
 
 
 
そしてその瞬間が訪れる日まで 君は必ず俺が守ってみせる
 
 
 
 
END
 
 
 
 
イメージソング   『Over and Over』   Every Little Thing
更新日時:
2007/07/22
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Last updated: 2010/7/31