REBORN!

15      裏切り   (アルコバレーノ 嵐・雲・雷・霧)
 
 
 
 
 
 鉄の扉を僅かに開き いくつかの影が滑り込むように中へと忍び込む
 一人が漆黒の幕をサッと引き
 一人はほとんど残りのない蝋燭に火を灯した
 見えぬ敵に存在を悟られぬよう 端々に神経を張り巡らせながら
 
 
 
 
 「1、2、3…結局合流できたのは4人か」
 「チッ そんだけかよ」
 「あまりそれは言わないように これでも上等な方ですよ?」
 「ただこの中にせめてコロネロにはいて欲しかった気はするよ」
 「それも言うなよバイパー お前の術がなければここまで来ることも出来なかった」
 「心配すんな 必ず生きているって 先輩とは付き合いの長い俺が保障してやる」
 「彼には『生き続けなくてはならない』理由もありますしね」
 「ラルねえ…」
 「まあ 彼女に数発殴られる覚悟だけはしておくかな」
 「実は俺もあの女苦手…」
 「おや? スカルくんに得意な女性のタイプなんてありましたっけ?」
 「うるせぇよ!」 
 
 
 
 
 ー嵐ー
 
 
 
 
 敵対する二つのファミリー ボンゴレとミルフィオーレ
 私がどちらに付くと問われたなら 間違いなく前者でしょうね
 今 ボンゴレには私の大切な宝を預けている
 私の元で真面目に優しく育ってくれた小さな紅い宝石
 それに深い愛情を注いでくれている十代目にも恩は感じていますしね
 ただあの子がどういう形であれ 今回の事に巻き込まれてしまったのならば
 最早私が立ち上がらない理由もないでしょう
 あの真っ白な頬に爪の先程でも傷を付けたとしたら
 可哀相に あなたたち全員まともな死に方は出来ないと思った方がいい
 
 
 
 
 ー雲ー
 
 
 
 
 ったく…随分と面倒なことに巻き込んでくれたもんだぜ
 ボンゴレもミルフィオーレもカルカッサにとっちゃまったく関係ねー組織だろうが
 まあ正直喧嘩沙汰は 正直三度のメシよりも大好きだがな
 だがやるなら部外者に見えないところでやるのが礼儀ってやつだろ
 悪いがそういう連中の為に自分の『なにか』を提供できるほど 俺はお人好しじゃないんでね
 例えそれが…呪われた力…だったとしてもだ
 もっとも俺自身 あの嫌な先輩の言葉に振り回されるように出来ちまってるから
 ミルフィオーレをぶっつぶせなんて愉快な指令が下ったとしたら
 黙って言うこと聞いちまうかもしんねーな
 でももしそれが現実になったとしても 俺の責任じゃないと思うんだぜ?
 
 
 
 ー雷ー
 
 
 
 
 自分の命を相手の目前に曝しているような状態なのに
 楽しくて楽しくてたまらない気持ちになるのは何故だろう
 あの日 秘密の地下室で例の書類を見つけた瞬間を思い出すせいだろうな
 そんな立場にいる僕を利用するなんて ただただ笑うしかないけれども
 まあ それは別にいいや それよりも君たちは知っているのかな?
 実は僕 以前ボンゴレ十代目の命を狙ったことがあるんだよね
 ボンゴレの血筋の主だし リボーンが近くにいるから成功するとは思っていなかったけれど
 ただその時も 自分自身に都合のいい細工だけは忘れなかったよ
 おや? もしかしてボックス兵器の開発者であるこの僕が
 そういった類の仕掛けをまるっきり施さなかったなんて 疑いもしなかったとか?
 …まさかねぇ…
 
 
 
 
 ー霧ー
 
 
 
 
 あの日全身に受けた あまりにも強大な呪いの力
 見知らぬ誰かがそれに目をつけて 利用すべく立ち上がるだろうと
 自由のきかぬ体で必死にもがきながら 心のどこかでそう悟ってもいた
 出来るならばその前に解いてしまいたかったが 今更言っても仕方ないか
 でも己の野望の為にボンゴレ十代目と守護者を利用しようなんて考えるとはね
 憎しみでさえ砕けぬ意志を持った炎の力 それを敵に回そうなんて
 図々しいのか よっぽどのバカか どっちかだと思うよ
 状況次第では 藍色の天使の手を煩わせるほどの事もないかもしれない
 おっと これは多少高くつく情報かもね
 なんなら君たちのボスの首で支払ってもらってもかまわないけれど?
 
 
 
 
 「でも敵に現状を知られるわけにはいかないと思うよ」
 「…しばらくは情報収集しつつ、静観ですかね」
 「カーッ!! 随分じれったい話じゃねーかオイッ」
 「慌てなさんな カルカッサ軍師の名が泣くぜ?」
 「慌てる乞食は貰いが少ないってね」
 「これはまた上手い事を…」
 「チッ」
 
 
 
 
 ーそう…いつか そう遠くない『いつか』 必ず飛び込むべき時は訪れるー
 
 
 
 
 さて 大空の姫君
 こんな自分たちを敵に回したんだ それ相応の覚悟はあるんだろうね
 
 
 
 
END
 
 
 
 
イメージソング   『Dance Dance Dance』   Mr.children
更新日時:
2008/08/05
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Last updated: 2010/7/31