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8      ラブリー☆キッス     STORY BY くぼみ様
 
 
 
 
 
鋼の守護聖ゼフェルは自分は宇宙一の幸せ者だと思っている。何でかって?そりゃあ物凄く可愛くて優しい新妻がいるからでしょ。そう2人は新婚ホヤホヤ!さて今回はどんな事件が起きることやら…。
 
 
 
 
今日も朝からとてもいい天気。こんな日には誰もが朝から元気になれるはず…なのだが…?ただひとり低血圧なわけでもないのに、だるそうにしている奴がいた。そう分かりのとおりゼフェルだ。朝食の席だというのにテンションが低くダンマリさん。奥さんのアンジェリークはというと心配でおろおろしている。
「あのゼフェル様やっぱり病気なんじゃ…?」
「いや大丈夫だって。」
「だってゼフェル様あれから一週間ずっと朝に限ってつらそうなんだもの。」
朝からずっとこんな調子である。さて只今どういう状況かというと、ゼフェルが執務をサボりジュリアスにこっぴどく叱られた事はご存じだろう。
(知らない人は「ラブリー☆ハニー」を読むべし!)あの日から丸7日間近く朝の出発前だけゼフェルは具合が悪くなるのだ。えっ?そりゃ怪しいって?そう、それはもちろん全部ゼフェルの演技。単純な事にゼフェルはあの時のアンジェリークのおまじない(ほっぺにチュッ♪)がいたく気に入ってしまい、わざといかにも気分が悪いという表情をして朝食へ来るのだった。しかし疑うことを知らないアンジェリークはもちろんうそだなんて気づくはずも無く、毎朝毎朝出かける前に出入り口で期待通り可愛らしいおまじないをしてくれるのであった。そしてゼフェルは毎朝毎朝その後にやけてくる顔を隠すのに必死だったのである。しかし何やら今日はゼフェルの様子が本当におかしい。顔が青白く食欲もあまり無い。
「(なんかマジで気分悪いんだけどよ…。)」
どうやらゼフェルも内心驚いている。実は本当に風邪をこじらせてしまっているのだ。だがそんなことに気づかないゼフェルは、大丈夫と言ってなんとか出入口のドアにまで向かった。
「そんじゃ行って来るぜ。」
「本当に気をつけてくださいね。」
アンジェリークはやっぱり心配顔だ。しかしゼフェルの頑固さは良く知っている。もう何を言っても無駄だろう。彼女もしぶしぶ行かせるようだ。だがゼフェルがドアを開けようとしたまさにその時だった。彼は一気に目眩がして目の前が真っ暗になるのを感じた。
「あっやっぱダメだ…。」
そう言うが早いかゼフェルは床にバッタリと倒れてしまった。
「きゃっ、ゼフェル様!!しっかりして!」アンジェリークの心配する声を微かに聞きながらゼフェルの意識は遠のいていった。
 
 
 
 
 
(あれ…俺どうしたんだっけ。)
「ゼフェル様お願い!目を覚まして!」
(あの声は…?)
「ゼフェル様!」
(アンジェ?ああそうか俺確か倒れたんだったな。うわっ冷た!何だ…?)
ゼフェルが目を覚ますと目の前には涙目のアンジェリークが心配そうに彼の手をしっかりと握っていた。
「あれ…俺…?」
ボーッとした頭でゆっくりとゼフェルは体を起こす。アンジェリークの横には心配顔のルヴァもいた。
「!!ゼフェル様!良かった〜。」
「うわっ!アンジェ?どうしたんだよ。」
アンジェリークがいきなり自分に抱きついてきたので驚く。
「ゼフェル、無事なようで安心しました。今までずっと気を失っていたんですよ〜。」
ルヴァに状況を説明されてやっとゼフェルは自分の立場を理解した。そして先程自分の顔に落ちてきた冷たいものがアンジェリークの涙であったのだと気づく。
「あっそっか…。悪かったな、ルヴァ。ここまで俺を運んでくれたんだろ?」
「いいんですよ〜。それより謝るなら彼女に言ってあげなくては、ずっと泣いていたんですから。」
「そっか…ごめんなアンジェ。心配かけちまったな。」
まだ自分に抱きついて泣きじゃくっている愛しい人をゼフェルは優しくなだめる。彼女は頭を撫でられて落ち着いたのかゆっくりと頭を上げた。目を真っ赤にしながらゼフェルの方を見つめるその姿はとても痛々しい。その姿にゼフェルは何とも言い難い愛しさを感じ、もう一度彼女を優しく抱きしめた。
 
 
 
 
「それではそろそろ私は帰りますね。ゼフェルくれぐれもお大事にしてくださいよ。陛下には私から伝えておきますので、今は体をゆっくりと休ませてくださいね。」
そう言いながらルヴァはゆっくりと立ち上がった。もう日も暮れかけている。
「ルヴァ様ありがとうございました。すごく助かりました。」
やっと泣きやんで落ち着いた様子のアンジェリークがお礼を言う。そしてルヴァを出入り口まで見送りに行った。
「今日はゼフェルのそばにいてあげてください。」
ルヴァが扉を開けながら彼女に告げる。その目はとても優しげだ。
「はい。もちろんそのつもりです。」
つられてアンジェリークもにっこりと微笑んだ。ルヴァが帰りアンジェリークが寝室に入ってきた。
「ゼフェル様、何かお口に入れておきますか?」
だが返事は返ってこない。しんとした静寂があるだけだ。
「ゼフェル様?」
アンジェリークがゆっくりとゼフェルの寝ているベッドに近づきそっと顔を覗いてみる。そこには安らかな寝息をたてて寝ているゼフェルの姿があった。
「(あっ…。ゼフェル様寝ちゃったんだ。)」
音を立てないようにアンジェリークはそっとゼフェルのベッドのわきに腰をおろした。そしてまじまじと彼の寝顔を見つめながらにこやかに笑う。
「もう…今日はホントに大変だったんだから。あんまり心配かけさせないでくださいね。」
そう言ってちょんと彼の手の上に自分の手を置いた。
「う〜ん…。」
するとゼフェルが寝たまま彼女の手を握り返した。
「(ふふっ。なんだか可愛いな。もうちょっと寝顔見ててもいいよね…。あっよく見るとまつげ長いんだ…。やっぱりゼフェル様ってかっこいいなぁ。鼻も結構高いし。それに口元も……。)
“ドキン!”
そう思った瞬間アンジェリークは彼の口元から目が離せなくなった。自分の耳元でドキンドキンと大きく心臓の音だけが鳴り響いている。
「(やだ…私ったら!何考えてるの?今キスしたいだなんて思ってる。)」
もう彼女はゼフェルの口元から目が離せないでいた。
「(…でも…寝ちゃってるからわかんないよね…。いい…かな…。ごめんねゼフェル様。)
そうしてゆっくりとアンジェリークは体を曲げてゼフェルの顔に自分の顔を近づけていく。ギシッとベッドがきしみ音を立てた。窓からは夕焼けの赤い光だけがこの部屋を照らす。アンジェリークの唇がゼフェルの唇に重なる。気付かれないようすぐに顔を上げようとした瞬間、何かにグイッと手を引っ張られた。
「えっ!?」
そしてあっという間に上げようとした顔を押さえつけられる。そしてまたもやゼフェルの顔にキスをする羽目になった。
「んんっ!!んんーーっ!」
アンジェリークは驚くが強い力で押さえつけられているのでもがくことしか出来ない。すると今度は口の中に何か生暖かいものが入ってきた。
「ーーーーーーーっ!!!!」
驚きの余り声にならない。その時パッと強く腕を握られていたのが解放された。がばっとアンジェリークは体を上げる。するとなんと目の前には悪戯っぽく笑うゼフェルの顔があるではないか。
「ゼッゼフェル様!起きてらしたんですか!?」
「ああ、俺が寝たふりしてたってのに全く気付かねーしよ〜。まぁおかげでいいもんもらったけどな〜。」
にやにや笑いながらゼフェルはアンジェリークを見る。そっとばれないようにキスしたつもりが、しっかりと彼が起きていたことを知りアンジェリークは顔から火が出るほど真っ赤になった。
「騙すなんてゼフェル様ひどいです〜。」(/////)
ゼフェルに抗議しながらも顔は赤い。そして自分が1人でなんとつぶやいていたかを考える。そういえばかっこいいとか言っていたかも…、まさか口に出して言ってないだろうが…、そんな不安を胸に抱きゼフェルに尋ねた。
「あの…私何か変なこと言ってませんでしたよね?」
「ああっ俺の顔がなんとかって言ってたような…。」
そう言ってゼフェルはちらりと彼女の方を見た。にやりと笑って…。
それを聞いたアンジェリークは更に顔を赤くした。
「やっぱりかっこいいって口にしちゃってたんだ〜。」
顔を両手で覆いアンジェリークはうろたえる。それを聞いたゼフェルは満面の笑顔になった。
「へぇ、おめー俺に対してそんな嬉しい事思ってくれていたのかよ。」
「!!!ゼフェル様また騙しましたね!」
「人聞きの悪いこと言うなって。俺は『言ったかもしれねー』って言っただけだぜ。」
ゼフェルは口ではそう言いながらも顔はにやけている。
「でもそういう含んだ言い方しなくてもいいじゃないですかっ!」
少し涙目になりそうになりながらもアンジェリークはプンッと怒ってしまった。
「んなに拗ねるなよ…。ほらっ!」
そう言ったゼフェルはグイッとアンジェリークを自分のベッドの中へと引っ張り込んだ。
「きゃっ。」
いきなりの事に驚いたアンジェリークだったがまじかにゼフェルの顔があったのでまたしても顔を赤くする。ドキドキする心臓の音を耳にしながらゼフェルの顔を見る。
「あっあのゼフェル様具合が悪いんじゃ…?」
「おめーといると早く治るんだよ。」
嘘だと解っているのに何も言えなかった。そしてしばしの沈黙…。
さっきまで見とれていた顔がまじかにある。すっとした鼻、きれいな銀の髪、形の良い口。彼女は胸が締め付けられるような気持ちになった。自分はこんなにも彼の事が好きだったのかと思う。するとふいにゼフェルの手がアンジェリークのほほにのびてきた。
「なぁこのまま朝までここにいないか…?」
真剣な中にどこか子供っぽさが交じり合った瞳でゼフェルは尋ねる。その顔に彼女はまたしても胸が苦しいような気持ちになった。
「私も一緒にいたい…。」
アンジェリークも素直に答える。それを聞いたゼフェルはのばしていた手でアンジェリークを抱き寄せる。
「アンジェ…好きだ。」
ゼフェルが荒々しくアンジェリークの唇をふさぐ。
「ゼフェル様…んっ…。」
そしてあっと言う間に彼女の着ていたブラウスのボタンをすべてはずした。
「ずっとおめーだけを愛してるぜ。」
「私もです…。んっ…あっ。」
アンジェリークの首や鎖骨に幾つものキスがされていき、たくさんの紅い華が咲く。こうして2人の影は夜の闇へと包まれていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
〜fin〜
 
 
 
 
くぼみ様のサイト『Pinky☆Cherry』様のキリ番777をゲットした際に頂いた創作です。書いて頂いたのは随分と以前だったのですが、パソコンの故障のための工事に突入してしまい、こちらでアップするのがこのようなタイミングになってしまいました。本当に申し訳ありません。そしてこちらでの公開を許可して下さいまして本当にありがとうございました。
リクエスト内容は、以前に頂いたことのある「ラブリー☆ハニー」という新婚さん創作の続編…ひたすらに甘くてラブラブな2人に餓えていたので、強引にお願いしたものです。期待通りの…いや、それ以上に素晴らしいお話を本当にありがとうございました。ちょっぴり大胆なコレットがいい…更にしてやったりの旦那様が格好良すぎます!! お忙しい中ご迷惑をおかけしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
更新日時:
2003/08/07
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Last updated: 2010/5/12