FOR ME

6      競争率     STORY BY 楓乃様
 
 
 
 
 
「あのっ…私、ゼフェル様の事が好きなんですっ!!」
 
自信がないながらも言った言葉。
ゼフェル様のことが好きで好きでたまらなくて
もう試験なんて考えられなくなってしまった。
そんな玉砕覚悟の告白をゼフェル様は受け入れてくれた。
 
 
ドッカ〜〜〜ンッ!!!
 
屋敷中に響き渡る爆発音。
どうやらこの音の犯人は鋼の守護聖ゼフェルらしい。
衣服に真っ黒のすすをつけて屋敷から飛び出してきた。
 
「ぶわっ!!また爆発しちまったぜ!」
後頭部をがしがしとかいてつまらなそうな顔をして座り込む。
近くにはぷすぷすと黒い煙を出す物体が転がっている。
 
「コホコホ…ゼフェル様…? どうかしたんですかこの煙…。」
たまたま通りかかったのだろうか、屋敷の門の前にはアンジェリークが立っていた。
手に育成表を持っている事から王立研究院からの帰りだろう。
 
「みっともねーとこ見られちまったぜ…。ところでどうだったんだ?育成の様子はよ?」
「はい。異常はないですよ。けどやっぱり女王はレイチェル決定寸前です。」
 
やっとの思いで両思いにになったのにかかわらず試験を続けているアンジェリーク。
ゼフェルが問いただしたところ、
“レイチェルと一緒に最後まで試験をやり遂げたい。”
などと言っていた。
はじめはそれには反対していたゼフェルだったが、
彼女に上手く丸め込まれてしまい、結局従うしかなかった。
 
「へえ…じゃあ試験ももう終わり近いのかよ。」
「はい。」
にっこりと微笑むアンジェリークを見て、ゼフェルは安堵の溜め息をもらした。
やっと試験から解放されるのかと思うと、自然に顔がにやけてくる。
 
「?ゼフェル様…、どうしたんですかにやにやして。」
「…さあね、自分で考えろよっばーか♪」
 
 
 
すっかり爆発した機械のことなど忘れてしまっているゼフェルは、
とりあえずアンジェリークを家に入れることにした。
 
 
 
「おじゃまします。」
 
屋敷にいる執事一人一人にぺこりとおじぎをしているアンジェリーク。
礼儀はいいし、優しいし、ゼフェルは自分の彼女である事を誇らしく思っている。
もちろんそんなアンジェリークはとても競争率が高く、かなり前からゼフェル自身も片想いをしていたのである。
つまりは相思相愛だったりするのだ。
だからそんな彼女が告白してくれた時は、嬉し泣きするほど嬉しかった。
 
「ー…様、ゼフェル様!!」
名前を呼ばれてはっと気付くと、目の前にキョトンとしたアンジェリークの顔があった。
ゼフェルはきょろきょろと辺りを見回し、誰もいないことを確認すると
アンジェリークの肩を抱き、そっと優しく頬にkissした。
 
「きやっ!?ゼフェル??」
予想どうり顔を真っ赤に染め上げたアンジェリークの姿を見て、ゼフェルはつい笑い出してしまう。
 
“自分がこんなにも幸せでいいのだろうか”と…
 
しばらく2人で幸せな時間を過ごしているうちにアンジェリークの門限になってしまった。
ゼフェルはアンジェリークを部屋まで送り、ちょうど屋敷の門をくぐろうとしたその時だった。
執事の若い新人顔集2人が話し合っている声がふと耳に入ってきたのだった。
 
 
 
「なあ、お前ゼフェル様の彼女見た事あるか?」
「ああっ!すっげー可愛いよな。」
 
 
 
“何ィィィッ!?”
 
噂をされているのは自分の彼女アンジェリークの事だった。
ゼフェルはふつふつと込み上げる怒りを抑えてその2人の話を盗み聞きしようと試みる。
 
「実はかなり俺のタイプなんだって。」
「でももう彼氏いるじゃん?」
「大丈夫だって!その内別れるに決まってるさ!あの2人じゃ性格が違いすぎるだろ?」
「なーるほど。じゃあまだチャンスはあるかもだな。」
 
 
 
そんな話をしている2人にこの後ゼフェルが何をしたかは言う必要もない。
 
 
 
「ったく!!なぁにがタイプだっ!!チャンスがあるだっっ!!」
ずんずんと前を歩いてゆくゼフェルは相当頭にきていた。
それもそのはず。
かなりの競争率だったアンジェリークをやっと手に入れ敵もいなくなったかと思ったが
2人が付き合っていようがいまいが、どちらにしろやってくるのである。
【競争率】は…。
 
 
 
「ぜってー別れねー!!」
1人大声で叫び、自分の部屋のベッドにごろんと寝転がる。
見慣れた天井を見て心を落ち着かせ、ふと机の上の雑誌が目に入った。
その雑誌の裏表紙には『結婚』の二文字が書かれていた。
 
 
 
「…結婚、ねえ…。」
頭にその二文字をちらつかせ、ゼフェルは眠りについた。
 
 
 
そして翌日…。
 
 
 
「あ、あの、困ります。」
「少しでいいからさ、一緒にカフェテラスにでも…。」
「すみません、私急いでますから!!」
 
 
 
「なんだアレ…?」
昼過ぎ、ぶらぶらと庭園を散歩していたゼフェルに噴水近くから大きな声が聞こえ、面白半分にのぞきに来たのだが、この後ゼフェルはとんでもない事件を目の当たりにする。
男1人に顔は見えないが女らしい人が1人。
最初は“誰かナンパされてやがる。あれはそーとーしつこそうだな”くらいだったゼフェル。
自分に何一つ関係ないと元来た道を戻ろうとした時だった。
「俺、君のことかなり前から気に入ってたんだ。あの鋼の守護聖ゼフェル様の彼女って有名だからさ。」
ゼフェルはぴたりと足を止め、ぱっと振り向いた。
なんと、そのナンパ男につかまっていたのは自分の彼女ー…アンジェリークだったのだ。
 
 
 
「はなしてくださいっ!!」
「いいからさー…。」
むりやりアンジェリークの手を取った男の顔を見てゼフェルの頭は真っ赤になった。
 
 
 
「てんめえぇぇぇぇっ!!!」
何も考えずにゼフェルはその男に殴りかかり、アンジェリークを解放した。
ゼフェルの怒りに震え上がった男は一発殴られ、すぐに逃げていった。
 
 
 
「ゼフェル様ぁ…。」
ぽろぽろと涙をこぼし、そばに駆け寄ったアンジェリークを抱きしめゼフェルはある決意をした。
 
 
 
「アンジェリーク!」
「はいっ!」
真剣なゼフェルに驚き、大声をあげてしまう。
「…愛してる。結婚しようぜ。アンジェ…。」
ぼそりと耳打ちし、またアンジェリークを抱きしめる。
アンジェリークは目をぱちくりとさせていたが、
やっと意味を理解した時にはもう涙は止まり満面の笑顔になっていた。
「嬉しいっ!!ゼフェル様!私も愛しています…。」
 
 
 
庭園の噴水の前で大プロポーズを成し遂げたゼフェル。
もちろんこのプロポーズの事を耳にしなかった者は1人もいない。
数日後ゼフェルはオリヴィエやオスカー、ちなみに陛下にまでもひやかされることになる。
 
 
そしてこの2人が結婚するのも、この日から丁度一週間後の女王試験終了日。
2人はたくさんの人に祝福をうれ、同棲生活を始めるようになる。
 
 
 
この2人がその後どうなったかは…また別なお話で…
 
 
 
 
END
 
 
 
 
楓乃様のサイト『Fancy dream place』様にて、5001番というキリ番ニアピン賞をゲットした際に頂いた創作です。(ご自身がキリ番を踏まれたということで、次の私が図々しくもリク権利を獲得したという…まさに棚ぼた物語なのでした。)リクエストの内容はゼフェコレ求婚編! 可愛いアンジェちゃんに迫り来るライバルたちの黒い影…ゼフェル様ははたしてどう戦うか? 彼のきつい一発が本音を語っている素晴らしいお話です。楓乃ちゃんありがとうー。高校生活をエンジョイしながら、時々わしとも遊んでね。
更新日時:
2003/06/10
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Last updated: 2010/5/12