FOR ME

5      ラブリー☆ハニー   STORY BY くぼみ様
 
 
 
 
 
 ひとつきほど前、新宇宙の女王試験が終了した。結果はアンジェリーク・コレットの圧勝で幕を閉じる。もちろん誰もが彼女が女王になるものだと思っていた。
しかし彼女はひとりの大切な人と一緒になることを選んだ。その相手は鋼の守護聖ゼフェル。2人は試験中からお互いに惹かれあっていたのである。そして遂に昨日、2人はみんなに祝福されて結婚式を挙げたのだった。
 
 
 
 
ー朝、ゼフェルはカーテンからもれる朝日のまぶしさに眠りから意識を引き戻された。まだ瞼を閉じたままの状態で隣で寝ているはずの人物を手探りで探す。だがいくら手を動かしても空を掴むだけ…。
その感触によりパッと重たかった瞼がやっと開かれた。ガバッと体を起こしてまわりを見る。
「アンジェ…!?」
自分の声が響くだけで何も起こらない。もしや昨日のことは夢だったのではなんて不安になりながらキッチンへと向かう。そこではちょうど最愛の妻が朝食の準備をしているところだった。
「あっ、おはようございます。ゼフェル様。」
彼が大好きな笑顔でアンジェリークは振り返った。
「おっ…おう。」
ゼフェルはなんとも間の抜けた返事を返す。
「朝食はもう少しで出来ますから、その間にお顔でも洗っててもらえますか?」
「ああ。」
言われたとおりに顔を洗いながら、ゼフェルは先程の思い違いが夢ではなかった事に、安堵のため息をついた。そして今日からアンジェリークを独り占めできるという喜びから
「(俺って幸せ者だよなあ。)」
なんて思いながら口を緩ませていた。
 
 
 
 
朝食を食べている時もゼフェルはずっと顔をにやつかせたままだった。しかしそんな彼に全く気付かずアンジェリークはふと口を開いた。
「ゼフェル様、今日からまた執務ですね。」
「は?執務う?」
ゼフェルの表情が一瞬にして凍り付く。
「ええ、だって今日は月の曜日ですよ。」
“何ーっ!!”とゼフェルは心の中で叫んでいた。実は今日はアンジェと2人っきりでゆっくり過ごせるぜーっ!とうきうきだったのである。そのつもりでいたので今日から執務だったという事を思いだしいっきにゼフェルの気分はどん底だ。
「あっああ、そうだったな…。」
彼は苦笑いを浮かべて答えた後、はあっと深いため息をついた。
「?ゼフェル様どうかされました?」
アンジェリークは小首を傾げてゼフェルを見つめる。
「いや、何でもねえ…。」
そう言いながらも彼の顔は暗かった。
 
 
 
 
「それじゃ行ってくるぜ。」
重い足を引きずりながらゼフェルは入り口へと向かう。
「はいっ、行ってらっしゃい!」
と言いかけてアンジェリークは何かを思い出したかのように両手を叩いた。
「待って、ゼフェル様!」
「ああ?何だよ。」
忘れ物をしたかと思い、ぐるりと振り向いた。
とその時アンジェリークの手が自分の肩に乗せられたかと思うと彼の頬にキスがされた。
ゼフェルは驚いて彼女を見るとちょっぴり顔を赤くしている。
「ゼフェル様今日は何だか元気がなかったでしょ?だから元気の出るおまじないです。お仕事がんばってきて下さいね。」
そう言って胸キュンものの笑顔を彼に向けた。
(ちなみにどれくらい胸キュンかというとその場にいた人なら誰でも彼女に惚れてしまっている程である)
そんな事をされたものだからゼフェルの中で何かが“プッツン”と切れてしまった。嗚呼…こうなってはもうダメである…。
「……サボる。」
低い声でゼフェルはつぶやく。
「え?」
「今日はサボる!!」
「ええっ!?」
と言ったかと思うとひょいとアンジェリークを抱き上げ家の中へと戻り出した。
「ちょっとゼフェル様、ダメですよー。サボっちゃ!!」
「うるせーっ、おめーが可愛いことするからイケねーんだよ。」
「そんなむちゃくちゃな〜。」
抱えられたまま彼女は抗議したが、結局切れてしまったゼフェルにはまったく効果がない。
「ゼフェル様どこに行くんですか〜!」
「寝室。」
「ええ〜〜っ!!!」
“バタン!”
と驚いている間に寝室の扉は閉められてしまった。てな訳でゼフェルはその日本当に執務をサボったのであった。
翌日彼はジュリアスにはこっぴどくしかられオスカーとオリヴィエには散々冷やかされたとか。まあそれはともかく、どうぞ末永くお幸せに…☆
 
 
 
 
 
END
 
 
 
 
くぼみ様のサイト『Pinky☆Chrry』様にて、鋼様バースディキリ番604をゲットした際に頂いた創作です。リクエストはやっぱり大好物の新婚さん編…タイトル通りのラブリーさに思わず床をゴロゴロと転がってしまいました。こりゃ年がら年中離したくないゼフェル様のお気持ちもわかりますわ。そして後日マルセル様に「執務サボって何しているの?ねえ何しているの?」なんて言われたりして。くぼみ様、本当にありがとうございました。大切にします。
更新日時:
2003/05/08
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Last updated: 2010/5/12