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執着の爪痕を背に残して (仁王雅治)
「なぁ どうして?」
「…綺麗だから…かな」
最近気がついたのは
背中に回された時の手が きつく握られていること
その時の力がスッと抜けている感じになって
妙に心が寂しくなった
「思いっきり抱きついても よかよ?」
「駄目だよ そんなの」
「そんなん寂しいだけじゃ」
「どうして?」
「俺がまだ新菜のモノになっていないような気がする」
貪欲になってゆくこの気持ちは
決して美しいだけのモノではないから
お前の指先で細い傷を刻んで欲しい
『執着』という血で汚れる瞬間でさえ
俺はお前と2人でいたい
更新日時:
2005/03/15
Last updated: 2010/5/14