LOVERS

48      貴女を待つ間に一杯の珈琲を   (不二裕太)
 
 
 
 
 
 教室でだって 寮でだって いつも彼女とは会えるけれど
 たまには外で待ち合わせというのをしてみたい
 例えば 彼女の大好きなコーヒーショップで
 まるで大人の恋人同士のように
 
 
 
 
 「遅くなってごめんね 不二くん 随分待ったんじゃない?」
 「そんなことないよ 俺も来たばっかりだし」
 やっぱり始まりはこんな感じの会話で
 でも気が付けば俺のことを不思議そうに見おろす彼女
 その視線はどうやら手元に集中しているようなんだけれど
 「コーヒーにお砂糖…」
 「へっ?」
 「もう五杯は入っているような気がするんだけれど」
 まずい! ついいつもの癖で!
 「ごめんね もしかしてコーヒー嫌いだった?」
 「違うんだ!」
 本当は男のプライドだって ないわけじゃないけど
 こんなに申し訳なさそうにしている顔 ほっとける訳がないって
 「コーヒーが嫌いなんじゃないんだ」
 「だって…」
 「ただ 甘い物が ものすごく好きなだけなんだ」
 
 
 
 
 「今の電話 裕太から? 今度いつ帰ってくるって言ってた?」
 「しばらく帰ってくる気ないって」
 「なんでまた…」
 「週末に新菜ちゃんが甘いお菓子を作ってくれるんだって」
 「ついに家族より彼女を取るようになっちゃったんだ」
 「うわぁぁぁーーーん 裕太ぁぁぁーーーっっ」
 「姉さん 自分にもう一人弟がいること忘れてない?」
 「弟というのは 単純な方が可愛いに決まってんのよ! 裕太ぁぁぁーーーっ」
 「…」
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/04/10
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Last updated: 2010/5/14