LOVERS

47      貴方からの残り香   (幸村精市)
 
 
 
 
 
 『疲れたから』なんてことは 理由にはならないけれど
 それ以外に言い訳はどうやら見つかりそうにない
 気が付いた時にはゆっくりと船を漕いでいて
 結局部室の机の上に顔を伏せて くーくーくー 
 それはいつもと変わらずに厳しい練習のある午後の出来事
 
 
 
 
 「んっ…」
 後ろから訪れた ふんわりと漂う甘い花の香り
 まるで大好きな彼に そっと抱きしめられた時のよう
 『おはよう よく寝ていたね』
 「精ちゃん!?」
 でもそこにいたのは本人ではなくて
 彼が愛用しているレギュラージャージの上着
 きっと笑いをかみ殺しながら それでもそっと掛けてくれたんだ
 
 
 
 
 ああ…まるで夢の続きをみているかのよう
 これまでにないほどの甘い罪悪感を抱きながら
 ジャージの袖口をギュッと握りしめた
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/05/13
前のページ 目次 次のページ

戻る


Last updated: 2010/5/14