LOVERS

45      キスで愛を刻み込んで   (丸井ブン太)
 
 
 
 
 
 夜が白く明けてゆく頃
 隣で眠っていた人が もそもそっと起き始めた
 「…腹減ったな」
 もしかしなくても第一声はそれでしたか…
 「ねえ新菜 何か作ってくんね?」
 色気の欠片もない一言にとことんむかついて
 今はわざと眠っているふり
 
 
 
 
 「…わかってんだぞ 起きてんの」
 「ブン太さあ 食べる前にすることあるんじゃないの?」
 だってこういうのって悔しいじゃない
 今は絶対に顔を向けてなんてやらないんだ
 「なんだよ それ…」
 掠れた声のトーンが上がってゆくのがわかる
 ちょっと待って! 私の方が逆ギレされちゃうの?
 「いいか ここで俺が色っぽいことを口にしたとして
 その間にいきなり腹の虫が鳴ったらどーよ!?
 お前それはそれできっちり怒るんじゃねーのかよっ!」
 「そんなんじゃないもん!」
 
 
 
 
 こんな時はやっぱり私のことを一番に考えて欲しいのに
 ただそれだけなのに どうしてわかってくれないの…?
 まずい 涙も一緒に出てきたみたい
 「ほれ こっち向けって!」
 「いやああーーっっ」
 強い手で強引に掴まれて 抱き寄せられて
 「んっ…」
 その熱は昨日の夜なんて比べものにならないほど
 
 
 
 
 「にーな なにか作って」
 「…はい…」
 
 
 
 
 
 
更新日時:
2005/06/11
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Last updated: 2010/5/14